夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

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役員貸付金と利息と元本組み入れと

少し前の日記で役員貸付金のことを書いたので、続きで利息のお話。
役員貸付金には利息のお話がつきものです。役員貸付金が発生する原因の多くは、「役員が会社のお金を使いこんだ」、「家事費を会社に払わせた」、「勝手にお金を持って行った(^^;」というような感じで、本来役員給与とすべきものを損金不算入と源泉所得税もれをさけるため、やむを得ず貸付金で処理をしたことに起因します。


法人税では、役員に対し経済的な利益を与えた場合「役員給与」として取り扱うことになり、その経済的な利益の例示として下記の通達で「無償で金銭を貸し付けた場合の利息相当額」が挙げられています。
そのため、利息を計上しないと利息相当額が役員給与として認定され、損金不算入と源泉所得税計上もれの往復ビンタを受けることになります。それをさけるため、役員貸付金に対しては受取利息を計上することになります。

法人税法基本通達9−2−9(債務の免除による利益その他の経済的な利益)
法第34条第4項《役員給与》及び法第36条《過大な使用人給与の損金不算入》に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係のある使用人をいう。以下9−2−10までにおいて同じ。)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるものを除く。)をいう。(平19年課法2−3「二十二」により追加、平22年課法2−1「十八」により改正)
(7) 役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額

しかし役員貸付金の多くは上記の通り、会社と役員間できちんと金銭消費貸借契約書を結んで借りたお金ではないため、役員にはお金を借りたという意識が希薄で「本当に利息を計上しないとダメなの?」といわれることもしばしばです(^^;。


貸付金の利息を計上しないことが認められる場合として、下記の基本通達があります。

法人税法基本通達2−1−25(相当期間未収が継続した場合等の貸付金利子等の帰属時期の特例)
法人の有する貸付金又は当該貸付金に係る債務者について次のいずれかの事実が生じた場合には、当該貸付金から生ずる利子の額(実際に支払を受けた金額を除く。)のうち当該事業年度に係るものは、2−1−24にかかわらず、当該事業年度の益金の額に算入しないことができるものとする。(昭55年直法2−8「六」により追加、平12年課法2−7「二」、平15年課法2−7「六」、平17年課法2−14「三」、平19年課法2−3「九」、平22年課法2−1「七」により改正)

  1. 債務者が債務超過に陥っていることその他相当の理由により、その支払を督促したにもかかわらず、当該貸付金から生ずる利子の額のうち当該事業年度終了の日以前6月(当該事業年度終了の日以前6月以内に支払期日がないものは1年。以下2−1−25において「直近6月等」という。)以内にその支払期日が到来したもの(当該貸付金に係る金銭債権を売買等により取得した場合のその取得前の期間のものを含む。以下2−1−25において「最近発生利子」という。)の全額が当該事業年度終了の時において未収となっており、かつ、直近6月等以内に最近発生利子以外の利子について支払を受けた金額が全くないか又は極めて少額であること。
  2. 債務者につき更生手続が開始されたこと。
  3. 債務者につき債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しがないこと、当該債務者が天災事故、経済事情の急変等により多大の損失を蒙ったことその他これらに類する事由が生じたため、当額貸付金の額の全部又は相当部分についてその回収が危ぶまれるに至ったこと。
  4. 更生計画認可の決定、債権者集会の協議決定等により当該貸付金の額の全部又は相当部分について相当期間(おおむね2年以上)棚上げされることとなったこと。

(注)
1 この取扱いにより益金の額に算入しなかった利子の額については、その後これにつき実際に支払を受けた日の属する事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)の益金の額に算入する。
2 法人の有する債券又は債券の発行者に上記(1)から(4)までと同様の事実が生じた場合にも、当該債券に係る利子につき同様に取り扱う。

というわけで、債務者に法的整理のような事実でも生じない限りは、利息の計上をしないことは認められないのですよね・・・。
小さな会社でも、会社は法人格をもった個人とは別個の存在。会社の財布と個人の財布が別物であることを理解しないと、役員貸付金はどうしても発生してしまうのでしょうね・・・。難しいところです。


ちなみに役員貸付金の利息は単利になります。利息に利息は、原則つきません。
下記の民法の規定により金銭消費貸借契約で複利の特約でもなければ、会社が催告したうえで元本に組み入れない限りは利息は発生しないことになります。

民法第405条(利息の元本への組入れ)
利息の支払が1年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

帳簿的には「未収入金/受取利息」みたいな仕訳で、元本と区別しておくことになります。
他の税理士さんの帳簿を見ていると、たまに「貸付金/受取利息」みたいに元本に直入されている場合があって、複利になって可哀そうだなあと思うことがありますね(^^;。


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