夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

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分掌変更による役員退職金と未払計上

役員退職金について話をしていた際に、「実際に退職した場合には5年ぐらいまでだったら未払いでも損金算入OKなのに、非常勤役員になるなど分掌変更があった場合には原則未払いではNGなのはどういう根拠やろか・・・?」という話題がでることがありました。
ぶっちゃけ本音の理由は「役員退職金で安易に利益操作するのは駄目ですよ」ということなのでしょうけど、それだけでは実際退職した場合と区別する根拠としては薄弱ですし・・・。聞かれたものの、うーんと悩んでしまいました。


法人税法の基本通達では、分掌変更の場合の役員退職金について、下記のように取扱いを定めています。

法人税法基本通達
9−2−32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)

法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。(昭54年直法2−31「四」、平19年課法2−3「二十二」により改正)

(1) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。 
(2) 取締役が監査役監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件のすべてを満たしている者を除く。)になったこと。 
(3) 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。 

この中の「(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。」の一節が平成19年の通達改正の際に付け加わっています。


役員退職給与は、会社法的には報酬等に含まれ、定款または株主総会決議で決めることになっています。

会社法 第361条
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額


法人税の計算上損金の額に算入するものは、公正妥当な会計基準による費用のうち債務確定したものが原則で、役員退職金については下記の通達で債務確定のタイミングを「原則:株主総会での決議」、「例外:支払い&損金経理」として、それぞれの際に損金算入されるとされています。

法人税法基本通達
9−2−28(役員に対する退職金の損金算入の時期)

退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。ただし、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、これを認める。(昭55年直法2−8「三十二」、平19年課法2−3「二十二」により改正)

たとえ分掌変更の場合の退職金であっても総会で決議したりしたら普通は撤回できないでしょうし、債務確定という事実は実際の退職の場合の退職金と変わらないように思えてしまいます。
うーん、考えても違いを設ける理由は分からないですね・・・。やっぱり単純に利益操作防止のためだけに設けられた注意書きなのでしょうか?


iphoneアプリで、「うにょ」を発見。懐かしくてダウンロードしてしまいました。

往年のMacHypercardスタックで、白黒2階調なのがノスタルジーを誘います。大学生のとき、レポートの合間などによくやったっけ。


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