夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

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学生役員と役員報酬と不相当に高額な金額

時々聞かれる質問でどう答えていいのか悩んでしまうものに、「大学生の子供を役員にして役員報酬を支払うことはできるのでしょうか?」というものがあります。
役員報酬で家族に法人の所得を分散するのは節税の王道ですが、損金とするためにはその金額が妥当なものである必要があります。


会社法上学生であっても、取締役や監査役などの役員に就任すること自体は可能です。ただ役員だからといって支給した報酬が、税務上損金に認められるかどうかは別の問題になってきます。
法人税では、役員に対する給与のうち「不相当に高額な部分の金額」が損金に算入しないとされています。
その不相当に高額な部分の金額は政令に定められていますが、その書きぶりは「当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額」となっており、はっきりとした基準があるわけではありません。

法人税法第34条 (役員給与の損金不算入)
2  内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。) の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。


法人税法施行令第70条 (過大な役員給与の額)
法第34条第2項(役員給与の損金不算入) に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
◆1  次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(法第34条第2項に規定する給与のうち、退職給与以外のものをいう。以下この号において同じ。) の額(第3号に掲げる金額に相当する金額を除く。) が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(その役員の数が2以上である場合には、これらの役員に係る当該超える部分の金額の合計額)

  


学生の役員への役員報酬の話が出る場合によく引き合いに出されるのが、次の40年ほど前の判例です。

東京地裁昭和44年(行ウ)第180号法人税更正処分等取消請求事件(却下、棄却)(原告控訴


本文判決要旨
(4)取締役丙は、原告会社代表取締役甲の長女であって、取締役に就任当時同人は18才であって、しかも大学国文科第1学年(昼間)に在籍し、学業の余暇を利用して、原告会社の経理関係の帳簿の整理、自動車運転等の職務に従事していたものである。
原告会社は右丙に対して年額930,000円の役員報酬を支払ったが、丙が原告会社代表取締役の後継者となる者であるとしても、丙の知識、経験、取締役として就任間もない事実、勤務状況、職務内容等からみた同人の会社経営に参画する程度と他の取締役、使用人に対する報酬、給与の額等を併せ考えると、丙に対して支払われるべき報酬の客観的相当額は、いかに高くみても会社設立以来の非常勤取締役丁に対する報酬額(年額600,000円)以上には出ないものというべきであるから、丙に対する報酬額930,000円のうち600,000円を超える分は、不相当に高額な金額であると認めるべきである。


理由(2)
取締役丙の役員報酬否認について(昭和41事業年度分)
原告が取締役丙に対して取締役報酬として昭和41事業年度分に930,000円を支払った旨の確定申告をしたところ、被告署長がそのうち600,000円を超える分についてこれを否認したことは当事者間に争いがない。
前掲各証拠及び成立に争いのない乙第4号証によれば次の各事実が認められる。
取締役丙は、原告会社代表取締役○○○○の長女で、原告会社の従業員として就労し、月額30,000円の給与の支給を受けていたところ、○○○○の後継者という立場から、昭和41事業年度中の昭和41年5月17日原告会社の取締役に就任したが、就任当時同人は18才であって、しかも大学国文科第1学年(昼間)に在籍し、学業の余暇を利用して、原告会社の経理関係の帳簿の整理、自動車運転等の職務に従事していたものである。
ところで原告会社の右事業年度中の取締役に対する報酬額は、代表取締役の○○○○に対し2,400,000円(月額200,000円)、専務取締役の○○○○に対し、1,260,000円(月額105,000円)、原告会社設立以来の非常勤の取締役である丁に対して600,000円(月額50,000円)、同じく非常勤の取締役である○○○○に対して240,000円(月額20,000円)であり、使用人に対する給料の最高額は23才の成年男子に対する月額30,000円である。右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定事実からすると、取締役丙は将来○○○○の後継者となる者であるとしても、取締役丙の知識、経験、取締役として就任間もない事実、勤務状況、職務内容等からみた同人の会社経営に参画する程度と他の取締役、使用人に対する報酬、給与の額等を併せ考えると、取締役丙に対して支払われるべき報酬の客観的相当額は、いかに高くみても丁に対する報酬額以上には出ないものというべきであるから、取締役丙に対する報酬額930,000円のうち、600,000円を超える分は、不相当に高額な金額であると認めるべきである。
従って、被告署長か゛法人税法34条1項に基づき、確定申告額のうち600,000円を超える分の損金算入を否認したことは違法ではないといわなければならない。

この判例は大分古いですが、昼間の大学生が余暇で会社の仕事に従事していた場合、非常勤の取締役の役員報酬額のうち、最高額(5万円/月)と同額が不相当に高額とならない金額という結論になっています。
しかしこの判例があるからといって、「他の非常勤の役員とおおむね同額」、「月5万円で年間60万円ぐらいなら妥当」というのは、うーんというところでしょうね。(5万円/月だと認められるという話は聞きますが・・・)
最近は学生であっても、学校にあまり行かず会社の業務に従事しているということともありえるでしょうし、やっぱり役員報酬の金額は学生であっても、実質で判断することになってくるのでしょうね。難しいです・・・。


※役員報酬と役員の権利義務のことを考えていたら、アマゾンから会社法の新刊ご案内メールが来ていました。

楽しく使う会社法

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木俣由美先生の以前読んだ会社法の本も、型破りで面白かったし、また買おうかな。


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