夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

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「借りやすい決算書の作り方」を読んだこと

元銀行員の税理士さんが書かれた、銀行対策を意識した決算書の作り方を解説した本。

借りやすい決算書の作り方―元銀行員税理士がこっそり教える

借りやすい決算書の作り方―元銀行員税理士がこっそり教える

地味な表紙の本ですが、内容も地味ながら真摯な感じでいい本でした。


銀行員は会計のプロでは決してなく、表面的な決算書の数字で格付けを決めることが多々あるので、それを意識した決算書を作成することが大事というのが、この本全体に流れる底流になっています。
私自身銀行員の経験はないですが、一般企業で与信管理の仕事をしていたことがあるので、きっとそうなんだろうなという印象です。
営業さんが持って帰ってきた決算書を格付け算定ソフトに入力して、財務指標を自動計算させて与信額を決定するという流れだったのですが、私自身は直接その取引先のことは全く知らないので、決算書の数字と信用調査会社のレポートだけで与信額を機械的に決めざるを得ませんでした。
営業さんから聞く取引先の話も参考にしますが、決算書から導かれた財務指標は数字で目に見える形になって出てくるので、どうしてもそれを重視せざるを得ません。
そのためにも格付けを上げるには、格付けソフト向けの決算書にすることが大事なポイントになってきます。


特に面白かったのが実態は同じでも、勘定科目の使い方などの工夫ひとつで格付けがかわることと、具体的にどうするのかという方法を解説したくだりです。
会計事務所で働くようになってから、他の税理士さんが作成された決算書を見て、「勘定科目を変えるだけで財務指標が良くなるのに・・・」と思うことはしばしばあります。
例えば、

  • リース債務を固定負債にしたら安全性の指標は向上するのに、流動負債で処理している。
  • 返済期間の定めのない役員借入金を固定負債に計上したら安全性の指標は向上するのに、流動負債に計上している。
  • 役員退職金とか投資有価証券売却損などを特別損失にしたら経常利益は上がるのに、販管費や営業外費用に計上している。
  • 倒産防止共済の掛金を資産計上した方が利益率は改善するのに、「保険料」で処理している。etc.


こういった科目をひと工夫するだけで、格付けがあがる可能性が高まるTipsが色々と分かりやすく紹介されています。他にも「リース資産をリース料処理ではなく資産計上して償却費とする方が、債務償還年数の数値が向上する」など、「なるほど」と膝を打つような方法も多く、次に決算を組む時には意識しておきたいものばかりでした。
正しい税金計算や節税を検討することは税理士として当然ですが、それと並行して「会計基準に沿って、かつ、格付けも考えたきれいな決算書」を作成することも常に意識しておきたいと思います。


※昨年の36時間研修の達成認定書

わざわざこんなものを送ってもらわなくてもいいのにという感じです(^^;。


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