夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

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会社が非居住者に家賃を支払う場合の源泉徴収

先日東京高裁で、非居住者から土地を買った際、購入者が代金の支払いの際に源泉徴収を忘れていたことで、本税の支払いと不納付加算税を課されたことを争ったものについての判決がありました。
地裁の判決は、買主側の落ち度ということで訴えた側の全面敗けだったのですが、高裁の判決もほぼそのままという感じです。
内容としては「買主が売主が非居住者かどうか確認しないとダメなんて酷すぎる・・・」みたいな感じだったのですが、完全に退けられたような感じですね(^^;。


この非居住者が所有する不動産に絡む源泉徴収ですが、売却代金と同じように家賃についても同様の定めがあります。

所得税法の「非居住者」の定義は下記の通り、海外の方のみならず、日本人でも海外に1年以上住んでいる方は「非居住者」に該当します。
そして、非居住者に対し国内源泉所得を支払う場合、源泉徴収義務があるとされています。
不動産の家賃も国内源泉所得なので、これを非居住者に対して支払う場合には原則20%の源泉徴収が必要となります。

所得税法第2条(定義)
◆3 居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
◆5 非居住者 居住者以外の個人をいう。


所得税法第161条(国内源泉所得)
この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
◆3 国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利若しくは採石法(昭和25年法律第291号)の規定による採石権の貸付け(地上権又は採石権の設定その他他人に不動産、不動産の上に存する権利又は採石権を使用させる一切の行為を含む。)、鉱業法(昭和25年法律第289号)の規定による租鉱権の設定又は居住者若しくは内国法人に対する船舶若しくは航空機の貸付けによる対価


所得税法第212条(源泉徴収義務)
非居住者に対し国内において第161条第1号の2から第12号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(その非居住者が第164条第1項第4号(国内に恒久的施設を有しない非居住者)に掲げる者である場合には第161条第1号の3から第12号までに掲げるものに限るものとし、政令で定めるものを除く。)の支払をする者又は外国法人に対し国内において同条第1号の2から第7号まで若しくは第9号から第12号までに掲げる国内源泉所得(その外国法人が法人税法第141条第4号(国内に恒久的施設を有しない外国法人)に掲げる者である場合には第161条第1号の3から第7号まで又は第9号から第12号までに掲げるものに限るものとし、第180条第1項(国内に恒久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例)又は第180条の2第1項若しくは第2項(信託財産に係る利子等の課税の特例)の規定に該当するもの及び政令で定めるものを除く。)の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。


ただし個人が賃借する場合で、自分や親族が居住する場合には源泉徴収義務がありません。

所得税法施行規則第328条(源泉徴収を要しない国内源泉所得)
法第212条第1項(非居住者又は法人の所得に係る源泉徴収義務)に規定する政令で定める国内源泉所得は、次に掲げる国内源泉所得とする。
◆2 非居住者又は外国法人が有する土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋(以下この号において「土地家屋等」という。)に係る法第161条第3号に掲げる対価で、当該土地家屋等を自己又はその親族の居住の用に供するために借り受けた個人から支払われるもの

しかし会社が賃借する場合には、用途が事務所用でも社宅用であっても源泉徴収義務が生じます。
これをまとめると、以下のような感じですね。

この非居住者の源泉所得税、給与や士業の報酬と違って小さな会社でも毎月納付しなければならないことが面倒なところです。


なお非居住者が、国内に事務所などのPEをもっている場合には、下記の手続きで免除証明書を取得して支払側に提示すれば、支払側は源泉徴収をすることなく、家賃を支払うことができます。
[手続名]外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書の交付(追加)申請|源泉所得税関係|国税庁


非居住者から不動産を購入するという事例は今まで出会ったことがないですが、非居住者に対して家賃を支払うというケースには時々出会うことがあります。
源泉徴収は、忘れて後々税務調査などで指摘されると、いったん借主が支払って、その後貸主側に不当利得として返還請求を行うことになります。
何年分もまとめて請求すると、「払う、払わない」で揉める可能性は高いですし、10%の不納付加算税を誰か被るかも揉めるポイントです。
「自社の社員が海外駐在しているので、その間会社が社員の自宅を借り上げて家賃を払った・・・」
「自社の事務所のオーナーが、いつの間にか非居住者に変わっていた・・・」
と言った場合にはうっかり忘れてしまいがちなのでご用心。


「相手も日本人やん!」
「相手も日本で確定申告して税金払ってるんやから、なんでこっちで源泉徴収しないとあかんねん!」
「相手が非居住者かどうかなんて、知らんやん!」
といった言い訳は通用しないので、会社が家賃を支払う場合には、相手が非居住者か確認することも大事ですね(*^^*)


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