夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

委任契約と請負契約、一体どちら?

先日末席に参加している税理士さんのメーリングリストで、「弁護士法人の受取る着手金は、何時益金に算入すべきか?」という話題が出ることがありました。
要は弁護士さんに支払う着手金は、「委任契約に基づくものなので収受時に益金算入すべき」か、「請負契約に基づくものなので仕事完成時に益金算入すべき」かどっちかなということだったのですが、次の日弁連さんのホームページでは、着手金の定義は下記のようになっているので、一般的には委任契約と解するものみたいですね。

「着手金は弁護士に事件を依頼した段階で支払うもので、事件の結果に関係なく、つまり不成功に終わっても返還されません。着手金はつぎに説明する報酬金の内金でもいわゆる手付でもありませんので注意してください。」

しかしこういう議論が出てくるということは、裏を返せばきっと委任者側の税務調査で「着手金は、まだ事件解決していないんだから『仮払金』や『前払金』で処理して、損金算入しちゃダメでしょう。」といういちゃもんをつけられることがあるということなのでしょうね。
「返金特約などがない限りは委任契約なのですから、支払時に損金算入でしょう」と切り返すためにも、民法の知識はやっぱり必要ですね。


この議論を見ながらふと思ったのが、税理士の月次の顧問契約はどこに分類されるのかなということです。
私の事務所の契約書は契約期間が1年で、内容は定期的な訪問・帳簿の確認と結果報告、随時の税務相談と年1回の確定申告書の作成になっているので、個人的には「毎月の顧問契約は委任契約」、「年1回の決算・確定申告書の作成は請負契約」の混合契約だと解釈しています。
ところが以前勤務していた会計事務所では、内容は随時の税務相談と年1回の確定申告書の作成とほぼ一緒だったのですが、毎月の顧問契約も「継続的な請負契約」という解釈をしていました。
果たしてどちらなのでしょうか?
民法の定義はそれぞれ次の通りです。

(請負)
第六百三十二条  請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。


(委任)
第六百四十三条  委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。


また印紙税の基本通達では、税理士委嘱契約書について下記のように記されています。

(税理士委嘱契約書)

17 税理士委嘱契約書は、委任に関する契約書に該当するから課税文書に当たらないのであるが、税務書類等の作成を目的とし、これに対して一定の金額を支払うことを約した契約書は、第2号文書(請負に関する契約書)に該当するのであるから留意する。(平元間消3−15改正)

決算時以外は特に「仕事を完成することを約す」ことは基本ないので、毎月の税務相談等の助言を行う顧問契約は委任契約に該当するのかなと、私自身は思えます。
一体どういう理由で、「継続的な請負契約」と解釈していたのでしょうね?もしかしたら契約書に契約期間の定めがなかった、または契約期間が複数年に渡るから「複数年にわたる継続的な申告書作成の請負取引」と解釈したのでしょうか?最後までその理由を聞くことができませんでした。


ちなみに解釈によって契約書に貼りつける印紙の考え方も変わってくるのですよね。
「委任契約」と「単発請負契約」の混合契約であれば、委任契約書は印紙税の課税文書にならないので、請負契約の部分だけが課税文書に該当し、2号文書として扱うことになります。
税額は、契約書に記載された契約金額により次のとおりとなっています。
税額は以下の通りですが、決算報酬は100万円以下ですので200円ということになってきます。

記載金額             税額
1万円未満のもの         非課税
1万円以上 100万円以下のもの 200円
100万円を超え 200万円以下のもの 400円
200万円を超え 300万円以下のもの 1,000円
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50億円を超えるもの     60万円
契約金額の記載のないもの 200円

継続的な請負契約であれば、契約書は「継続的取引の基本となる契約書」となり、7号文書として一律4,000円になるのでしょうね。


神戸市東灘区御影の会計事務所 小林敬幸税理士事務所です