夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

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「一澤信三郎帆布物語」を読んだこと

長男と三男との骨肉の跡目争いで有名となった、京都の老舗カバン屋さんの、お家騒動顛末記。

一澤信三郎帆布物語 (朝日新書)

一澤信三郎帆布物語 (朝日新書)

タイトルの通り、三男さん側に立って書かれたものであるため、遺言書をめぐる裁判の顛末の他、三男と職人さんとの仕事に対する愛情と絆と三男さんの新会社設立の経緯、創業以来の会社の軌跡なども書かれており、先日の最高裁での逆転判決でめでたしめでたしという結びになっています。
三男さんへのカバンそして仕事へのこだわりも随所に散りばめられ、今度京都に行った際には一度覗いてみたいなとつい思ってしまい、いろいろな意味でいい出来の本だという印象でした。


ただ斜目に見ると、この話は事業承継の失敗事例の一つとも言えるのでしょうね。
巻紙に毛筆で書いたとはいえ、公正証書にしていなかった遺言書。
経営権を譲りたいのであれば、株式を生前に贈与するなどの対策を行っていなかったこと。
兄弟間の不仲が知れているのであれば、後継者以外の相続人への対策を行っていなかったこと。

この本を読みながら、無用な争いを避けるため、もうちょっとなんとかできたのではなどとも思えてしまいました。


会社法施行以前で、現在のように種類株などの対策のバリエーションが少なかったり、贈与税も暦年贈与しかなかったとはいえ、いくばくかは対策の取りようがあったのかなと、傍目には思えてしまいます。
いくら日付が優先するとはいえ、とりあえず遺言書だけは公正証書にしておくにこしたことはないのでしょうね。


しかし、遺言書の偽造が本当だった場合、長男や四男が継ぐべき財産はどうなるのでしょう?
意図的にやっていたのであれば、本人は欠格で相続権は失うのでしょうけど、孫に相続権は代襲するため、孫に行くことになるのでしょうか。
また自筆の遺言書を偽造するのもすごいなあと思ってしまいますが、「本人は刑事で罪になって損害賠償も請求されるかもしれないけど、財産は孫に行くから問題なし!遺言書偽造してしまえ!」みたいな感じで、つい偽造してしまったという感じなのでしょうか。


事業承継は、やはり生前からの段階的な準備が大事ですね。


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