夢見る税理士の独立開業繁盛記

神戸市東灘区で開業している駆け出し税理士の、試行錯誤日記

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所得税法のO-157

先日大ベテランの税理士さんにお会いした際に、参考にということでご自身が翻訳されたOECDモデル租税条約と日本税法学会の学会誌を頂きました。


すべてを読むにはパワーが必要となりそうですが、ひとつ学会誌の論文が面白そうだったので朝からさっと読んでみました。
ある弁護士さんが書かれた論文で、タイトルは「課税庁による私的自治への介入」。
内容は「所得税法O-157(笑)」と言われる、所得税法第157条(同族会社の行為計算の否認)について論じたもの。
この行為計算の否認規定は、以下のように「例え税法に従って税金の計算を行ったとしても、同族会社を使って通常ありえないような行為で税額を減少させた場合には、税務署長の判断でその行為を否認出来る」というものです。

第157条(同族会社等の行為又は計算の否認等)

 税務署長は、次に掲げる法人の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主等である居住者又はこれと政令で定める特殊の関係のある居住者(その法人の株主等である非居住者と当該特殊の関係のある居住者を含む。第4項において同じ。)の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その居住者の所得税に係る更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その居住者の各年分の第120条第1項第1号若しくは第3号から第8号まで(確定所得申告書の記載事項)又は第123条第2項第1号、第3号、第5号若しくは第7号(確定損失申告書の記載事項)に掲げる金額を計算することができる。


受験生時代にもこの行為計算の否認規定は、租税法律主義の観点からは「??」だが、「伝家の宝刀」として定められていると教えられました。
普段から「抜くぞ、抜くぞ」と、納税者が非常識な行為で租税回避を行わないように圧力をかけ、いざというときには「抜身一閃」。見せしめにずばっとやってしまって、一罰百戒とする。
これを習った際には、やはり「変な法律だな」という思いを禁じえませんでした。


この論文の弁護士さんも論文の最後で「こんな訳の分からない条文は、とっとと税法典から削除すべきである。」と結んでいますが、弁護士さんから見てもこの条文はやはり変なのでしょうね。
ちなみに初めてこの行為計算の否認規定が制定されたのは、大正9年なのだとか・・・。戦前はいざ知らず、戦後の民主主義のもと国民が自ら決めた所得税法に従って税金計算しても、それが税務署長の判断で覆ってしまうのは、なんとなく違和感を感じてしまいますね。
とはいえ法の隙をついてアクロバティックな方法で租税回避が行われた場合、それを防ぐためにこの条文はやはり「伝家の宝刀」、必要悪として必要なのでしょうか・・・?


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